東シナ海327次、331次観測参加報告

科研費・新学術領域研究の一環として、梅雨前線および黒潮周辺の大気海洋相互を解明するために、東シナ海において船舶からの高層大気観測および海中観測が行われました。本観測にM1の山田恭平が観測に参加したので報告します。

東北大学大学院理学研究科地球物理学専攻
大気海洋変動観測研究センター気候物理学分野修士1年 山田恭平

科研費・新学術領域研究の一環として、梅雨前線および黒潮周辺の大気海洋相互を解明するために、ラジオゾンデによる高層観測お よびXBTによる海中観測が東シナ海、とりわけ長崎—那覇間、西表島周辺などで2011年5月21-23日、6月21-30日に 行われた。本観測にM1の山田恭平が観測に参加したので報告する。


(図 1.石垣島のイリオモテジャナイヤマジャナイネコ)

観測は地上におけるレーダー観測と長崎大学水産学部所有長崎丸上での観測を連動させて行われた。


(図2.最大速力16.2kt 三代目長崎丸外観)
ラジオゾンデ観測

ラジオゾンデ観測はバルーンとゾンデ(温度計、湿度計、気圧計)を組み合わせた高層観測である。

→ 参考:気象庁|ラジオゾンデによる高層気象観測について(気象庁)

通常気象庁などではUTC0時と12時(日本時間では9時と21時)に行うが、今回は短いときには1時間に1回程度、長いとき には6時間で1回の間隔で行った。

 

放球1時間前
ゾンデの衛星同期を始める。ゾンデに電池をセットし、ゾンデ受信装置で連動させてセンサ類が正常に作動しているかどうかを検査 したのち、GPS電波が入りやすいデッキなどにゾンデを放置する。
放球15分前
バルーンをヘリウムガスによって膨らませる。
ゾンデ観測に用いるバルーンは伸縮性に優れるが、薄く繊細で、床や壁に当たると割れやすいらしい。特に船上では風が強く、バ ルーンが煽られて周囲にぶつかりやすいので注意する。

放球5分前
膨らんだバルーンとゾンデを凧糸で繋ぐ。
このとき、バルーンの上昇でゾンデがあっちこっちに行かぬよう、凧糸は糸巻きに巻かれた状態のものを用いて衝撃を緩和する。

(図3.バルーンにガスを送る様子。図では100gのものを用いているが、 より大きく、高く飛ばすことのできる350gのものも 用いた)

 


(図4.放球の様子)
放球

バルーン→凧糸糸巻き→ゾンデの順に放して放球する。

またゾンデの上昇開始に連動してゾンデの受信装置側の動作を開始する。
ゾンデのセンサ、とくに湿度計部分は雨滴の影響を受けやすいので、雨天時は雨滴が当たらないように注意する。

XBT観測

XBT(Expendable Bathythermograpgh:投棄型深度水温計)による観測は主にゾンデ観測と連動させて行った。
XBTはおもに投下用銃身とプローブと呼ばれるセンサ兼錘とそれらを繋ぐエナメル線から成っている。投下されるプローブのサー ミスタが海中の温度を測定する。

参考: XBTとは(海上保安庁海洋情報部ホームページ)

プローブと銃身を繋ぐ部分は繊細かつ錆びやすい部位であるため、錆びぬよう工夫することが重要である(雨天時でなくても湿度で 錆びるとエラーが発生するため、基本的にプローブはつけっぱなしにしておき、プローブを交換するときにだけ取り外す)。

アスマン乾湿計観測

地上(本観測では洋上)における温度と湿度を測定する。
乾球温度計と湿球温度計の値の差を読みとることにより湿度を観測する。

初回の第327次観測では初の乗船ということもあり、船酔いをしてしまい、食事の半分を食べずに寝たきりでベッドから手だけ出 ているという有様であったが、二回目の第331次観測では台風の暴風の中でもまったく酔わなかった。調子に乗って食事を食べ過ぎ なかったのが良かったのかもしれない。
初めての、しかも船上での観測ということで諸関係者の方々には多大なご迷惑をおかけした(特に酔いが酷かった第327次)。こ の場を借りて感謝の意を述べたい。


(図5.ちゅら海水族館オキゴンドウのオキちゃん。