氷雲の鉛直不均質性とそれが熱赤外観測データを用いた雲特性の推定に与える影響についての研究

鉛直不均質(VIH)な氷雲は、受動型リモートセンシングにおいて平行平面雲層(PPH)を仮定しているが、それによって推定の雲特性に顕著な誤差をもたらすことを考えられる。その雲推定の向上のため、適切なVIHモデルの導入が必要となる。本研究では、CALIPSO及びCloudSat衛星観測の1年間のデータ解析から氷雲の鉛直不均質性をモデル化し、氷雲の鉛直不均質性が熱赤外観測データを用いた雲特性の推定に与える影響を調べた(Khatri et al., 2018)。

衛星データの解析結果によると、雲氷量の鉛直積算値 (IWP)の増加につれて、雲氷量(IWC)の鉛直プロファイルのピークが雲の中層から雲底へ移動する傾向がある。その一方、比較的厚い雲の場合、IWPの増加につれて、IWCプロファイルのピークが雲底付近から雲頂へ移動する傾向がある。また、雲粒有効半径 (CER) と雲粒数濃度のプロキシの鉛直プロファイルは、IWCプロファイルと密接な関連性を示す。雲頂温度の関数として、雲の幾何学的厚さ (CGT) と雲のカラム特性 (IWPとカラムCER) を結びつける経験的モデルも提案した。PPH雲層の仮定に対して、VIHモデルを導入した推定において、推定誤差が減り、DARDAR雲プロダクトとも比較的近づくことが分かった。また、前者 (PPH) に比べて後者 (VIH) による推定のカラムCERと高い雲の雲頂高度が高くなることが分かった。詳細は、 Khatri et al. (2018)に。

 

図1. 規格化された高さ(z *)に対して規格化されたIWC(w*)、有効半径(re*)、雲粒数濃度のプロキシとしての数濃度MNC(N*)の鉛直プロファイル。データは、2007年の2C-ICEプロダクト。

図2. 2015年8月24日の0500 UTCにおけるAHI観測データを用いたPPH(上)とVIH(中)に対する推定の雲パラメーター(CTH、COT、CER)と、それらの差(下)の全球分布。

 

Publication

Khatri, P., H. Iwabuchi, and M. Saito, Vertical Profiles of Ice Cloud Microphysical Properties and Their Impacts on Cloud Retrieval Using Thermal Infrared Measurements, J. Geophys. Res. Atmos. (https://agupubs.onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1029/2017JD028165)