雲の特性を示す値を用いて得られた台風の日周期パルスの特徴

本グループが開発した、静止気象衛星ひまわり8号による雲の様々な特性値の推定手法を用いて、台風を時間・空間的に高解像度で解析しました (Wang et al., 2019) 。具体的には、スーパー台風Atsani(T1516)の事例に対して、雲頂の高い雲を光学的な厚さによって、分厚い雲(OHC)、巻層雲(Cs)と巻雲(Ci)に分類し、日周期を解析しました。すると、台風の中心付近の雲頂高度が、朝と午後に2度ピークを迎えていました。それらに対応して、中心から外向きに雲頂の高い部分が「パルス状」に伝搬している様子も見られました。

これら2つの「パルス」には違いがありました。 最初のパルス(黒い矢印で表示)は24時間持続していました。0500-0700地方太陽時(LST)に始まり、雲が薄くなりながらの外側へ緩やかに伝搬し、翌日の0400 LST頃にCiで消滅していることが分かります。2つ目のパルス(灰色の矢印で表示)は半日間続いており、台風の中心から1000 km以内に伝搬が制限されていました。また、最初のパルスがOHC、CsとCiのそれぞれの雲タイプで消滅すると、それに応じて3つの雲タイプの雲量も最大となりました。

図1.  2015年8月17日から21日(地方太陽時)におけるひまわり8号の観測から、統合雲解析システム (ICAS) によって導出した、それぞれ雲タイプにおける雲頂高度の中央値の日周期パターン。左から順に分厚い雲 (OHC) 、巻層雲 (Cs) 、巻雲 (Ci) 。2つのパルスが含まれるように、日平均を48時間スケールで表示している。黒色 (灰色) の矢印は朝方 (午後) に始まるパルスを示す。

 

Publication

Wang, X., H. Iwabuchi, and N. Takahashi, 2019: Characteristics of diurnal pulses observed in Typhoon Atsani using retrieved cloud property data. SOLA, 15, 137−142, doi:10.2151/sola.2019-025.