深層学習を用いた地上からの雲観測手法の提案

雲の光学的厚さの空間分布の観測は、太陽光発電の予測と診断に役立ちます。しかし、大気中で起きる複雑な三次元放射伝達を考慮する必要があるため、地上からの雲の光学リモートセンシングはこれまで困難でした。我々は、三次元放射伝達モデルに基づいて多層構造を持つ畳み込みニューラルネットワーク(CNN)を訓練し、カメラの画像から雲の光学的厚さを推定する方法を開発しました(Masuda et al., 2019)。これにより、地上に設置されたデジタルカメラの画像から雲分布を定量的かつ高速に推定できるようになります。モデル計算による合成データを用いて性能評価を行い、CNNはカメラ画像に含まれる分光特性と空間コンテキストの両方を使用して雲分布を推定していること、また、各種の条件に依存する複雑な三次元放射伝達の効果を精度よく表現できていることが示されました。初期テスト結果として、実際にデジタルカメラの画像から雲光学的厚さを推定し、日射計による観測と比較を行い、高い相関関係が示されました。この新しい手法により、安価なカメラを使用して雲を定量的に測定できるようになりました。

深層学習技術は複雑な物理モデルの高精度近似を可能とし、これまで困難だった問題を解決する一つの道具として有用です。物理モデルを用いて深層学習モデルを訓練するというアプローチは、地球惑星科学におけるリモートセンシングなどで今後も新たな展開をもたらすと期待されます。

図1. 畳み込みニューラルネットワークを用いた雲の光学的厚さの推定の例。(左)シミュレーションにより作成したカメラ画像、(中左)仮定した光学的厚さの真値、(中右)推定した光学的厚さ、(右)光学的厚さの推定誤差。(Masuda et al., 2019より)

Publication

Masuda, R., H. Iwabuchi, K. S. Schmidt, A. Damiani, and R. Kudo: Retrieval of Cloud Optical Thickness from Sky-View Camera Images using a Deep Convolutional Neural Network based on Three-Dimensional Radiative Transfer. Remote Sens., 2019, 11, 1962; doi:10.3390/rs11171962
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