2018/3/30 (Fri.),H. Iwabuchi
Fig. 1 Pollen corona observed at (left) 13:58 and (right) 14:18 JST on March 30, 2018, in Sendai, Japan.
今日 (2018年3月30日) 13時JST頃,O君が花粉光冠が見えていると知らせてくれた。写真を見せてもらったら,とても鮮やかな光冠が写っていた。2日前にも花粉光冠を見たばかりである。このところ,晴れて暖かいので花粉の飛散量もピークのようだ。
外に出てみると,空が澄んでいるおかげで,今日の光冠はとても鮮やかに見えている (Fig. 1)。光冠は太陽の周りに虹色の光の輪が何重かに連なって見える光学現象であり,輪の直径は角度にして,約2–5度以内であるので,太陽を直接見ないように注意して観察しないと危険である。太陽を建物や街灯などで遮蔽して観察するとよい。一番内側が赤,その外側に緑,青の輪が見え,さらに赤,緑,青と2巡目の輪が見えている。よく見えると,うっすらとではあるが3番目の赤い輪まで見えた。
光冠はエアロゾルや雲粒などの微粒子による光の回折が原因で生じる。回折角は,光の波長に対する粒子の大きさの比で決まっており,粒子の大きさが一定なら光の波長によって回折角が変化するため,波長(色)によって異なる角度で光の輪が太陽の周りに見えることになる。スギ花粉の大きさは直径約30 µmであり,1つの小さな突起を持っている。花粉が球形に近く,大きさが揃っているときに,観測された光冠が理論的に説明できることは,Hioki and Iwabuchi (2015) で確認された。
ところで,2日前 (2018年3月28日13–16時頃) の光冠で特に顕著だったが,太陽が低くなってくると,光冠は少し縦長の楕円形に見えた (Fig. 2)。松の花粉は(水分子模型のような)非球形の形をしており,著しく楕円形の光冠になることが知られている。しかし,今の時期の飛散量としてはスギとヒノキ,ハンノキの花粉が主であり,中でもスギとヒノキの花粉の量が多いと思われる。ヒノキの花粉もスギ花粉と同じく,直径約30 µmで球形に近い。2日前や今日の光冠が楕円形に見えたのは,果たして何の花粉によるものだろうか。
Fig. 2 Pollen corona observed at 16:22 JST on March 28, 2018, in Sendai, Japan.
2日前にはPM2.5の量も多く空が少し白っぽかったのと比べ,今日の空は鮮やかな青でエアロゾルも少ないと思われた。エアロゾルの光学的厚さは0.1程度だろうかと思って,後でSPRINTARS (https://sprintars.riam.kyushu-u.ac.jp) の予測値を見ると,12時 JSTの仙台付近の予測値は0.02–0.03を示していた。いずれ今日の空はとても澄んでいる。過日よりは少し風が冷たかった。ライダーの観測図を見ると (Fig. 3),28日,30日共に,光冠が見えた12–15時頃の時間帯には,0–2 kmにエアロゾルが見えており,2 kmよりも上空はとても清浄である。偏光解消比は比較的高い部分がある。下層2 kmでは,朝から昼または午後にかけてエアロゾルの増加が見られる。上空はエアロゾルの少ない清浄な状態にあったところ,次第に大気下層の花粉の量が増大して,光冠が見えたと考えられる。
References
Hioki, S., and H. Iwabuchi, Photographic observation and optical simulation of a pollen corona display in Japan, APPLIED OPTICS, 54 (4), 12-21, 2015.
Fig. 3 Lidar measurement result for March 26–30, 2018 at Tohoku Univ. observation site in Sendai, Japan.