ひまわり8号の多バンド赤外測定による雲特性の推定

新世代静止気象衛星「ひまわり8号」による熱赤外域の測定から雲の様々な特性を推定するアルゴリズムを開発し,論文誌J. Meteor. Soc. Japanに発表しました (Iwabuchi et al., 2018)。ひまわり8号は可視域から熱赤外域まで16個のバンドを持っており,時空間分解能も向上し,観測性能が大幅に改良されました。

私達のグループでは,ひまわり8号による高頻度の観測 (10分毎) を利用し,ニューギニアの近くの領域について8日間のデータを解析し,雲システムの日周期を調べました。雲の高度や光学的厚さに基づいて数種の雲型を分別して時間変化を求めた結果,対象領域の海陸分布に関連する日変化の典型的な特徴が示されました。陸上では、中層雲は0900から1200地方太陽時(LST)に増加し,深い対流雲は1200から1700 LSTの間に急速に発達し,続いて巻雲や巻層雲が増加し広がっている様子が捉えられました。ひまわり8号による高頻度の観測により,雲系の連続的な時間変動を捕捉することができ,本手法は雲のプロセス研究に有用であることが示されました。今後の発展が期待されます。

(a)

(b)

図1. 統合雲解析システム (ICAS) によって導出した (a) 雲の光学的厚さと (b) 雲頂高度の時間変化(10分間隔)。2016年1月14–19日の事例。各種の雲の発達から消滅,変遷の様子がわかる。

Publication

Iwabuchi, H., N. S. Putri, M. Saito, Y. Tokoro, M. Sekiguchi, P. Yang, and B. A. Baum, 2018: Cloud property retrieval from multiband infrared measurements by Himawari-8. J. Meteor. Soc. Japan, 96B, 27-42, 2018. https://doi.org/10.2151/jmsj.2018-001