静止気象衛星ひまわり8号の2つの赤外バンドを用いて、雲の光学的厚さと雲頂高度を推定する手法を開発し、論文誌SOLA(Sakai et al. 2019)に発表しました。本手法では、赤外輝度温度を、雲の光学的厚さ、雲頂温度、衛星天頂角、地表面温度、水蒸気量の関数として簡単な数式で表現するモデルを構築しました。このモデルは高速計算が可能となっており、ひまわり8号のフルディスクデータ(解像度2 km, 10分)をリアルタイムで解析することが可能となりました。本手法の適用例として、暖水域における1ヶ月間の雲タイプ別の日変化について解析し、より高精度な物理ベース手法の解析結果とほぼ一致した結果が得られました(図1)。今後は、ひまわり8号の高い時空間解像度の利点を生かした、広域における雲解析に応用されることが期待されます。
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Sakai, S., H. Iwabuchi, F. Zhang, Development of a Rapid Retrieval Method for Cloud Optical Thickness and Cloud-Top Height Using Himawari-8 Infrared Measurements. SOLA, 2019, Vol. 15, 57−61, doi:10.2151/sola.2019-012
図1. 本手法(実線)と物理ベース手法(点線)の雲タイプ(色)別の雲量の日変化。領域は15°S ~15°N, 90~160°Eで2016年1月1ヶ月間の1時間ごとのデータを使用した。(a, b)は上層雲(High)、中層雲(Mid)、下層雲(Low)について、(c, d)は積乱雲(DC),巻層雲(Cs), 巻雲(Ci)について示す。(a, c)は陸上、(b, d)は海上について示す。