東アジアの夏季に特有の梅雨前線による降水帯に伴って、地域ごとに特徴的な雲・降水の日周期が現れることが知られていますが、対流雲の成熟期から衰退期に見られるような薄い上層雲の日周期の実態は解明されていませんでした。
そこで私達のグループでは、ひまわり8号の多バンド赤外測定から推定した雲特性データ (Iwabuchi et al., 2018) を雲の光学的厚さに着目して解析し、6月の梅雨前線に伴う雲の日周期の実態にせまりました。その結果、中国東部や南西諸島付近では、厚い雲と中程度に厚い雲の日周期振幅が卓越しており、伊豆諸島付近では中程度に厚い雲の日周期振幅が卓越していることがわかりました(Yamashita and Iwabuchi, 2022)。中国東部や南西諸島付近で見られる雲の日周期は対流活動に強く関連したものであるのに対して、伊豆諸島付近で見られるものは、対流活動との関連は低いと考えられます。この知見は、気象予報モデルの再現検証への利用が期待されます。
図1. 2016-2019年6月における上層雲の平均出現頻度。点線で囲まれた領域を解析領域とした。
図2. 図1の点線で囲まれた領域における、雲の出現頻度・降水日周期の (a) 振幅の大きさと(b)ピーク時刻の経度分布。茶色は光学的に厚い上層雲を、橙色は光学的に中程度の上層雲を、黄色は光学的に薄い上層雲を、青色は降水を表す。有意な雲の日周期の部分に着目するため、日周期の出現頻度の振幅が0.015以上のときのみ、(b)の雲のピーク時刻を描画している。
Publication
Yamashita, T., Iwabuchi, H., 2022: Diurnal variations of different types of cloud over the Baiu–Meiyu frontal zone using retrieved cloud properties: Implication for the rainfall process. Atmospheric Research, 271, 106139. https://doi.org/10.1016/j.atmosres.2022.106139