衛星観測は雲の特徴や気候システムに対する雲の役割を理解する上で必要不可欠であるが、衛星観測による雲物理量の推定精度は雲リモートセンシングの重要な課題の1つとして位置付けられている。雲の地上観測は衛星雲プロダクトの検証の際だけでなく、高頻度の観測により雲の特徴を詳細に理解する際にも役立つ。私たちは地上観測のスカイラジオメーターによって観測された天頂放射輝度スペクトルを使用して、雲光学的厚さと雲有効半径の推定アルゴリズムを開発した (Khatri et al., 2019)。ここで、長期間の観測に伴うフィルターの劣化という問題に対処するために、観測データによる較正の手法を提案した。この手法は一般的な較正伝達手法よりも精度が良い。雲光学的厚さが15よりも小さい領域の一部を除いて、雲光学的厚さと雲有効半径の推定誤差は小さい。また、雲光学的厚さの推定精度は雲有効半径の推定精度よりも良い。スカイラジオメーターによって推定された雲物理量はMODIS (Terra, Aqua)、AHI (Himawari-8)、SGLI (GCOM-C) などの複数の衛星センサーによる雲プロダクトの検証に活用されている。
図1 推定した(a) 雲光学的厚さ、(b) 雲有効半径の平均バイアス誤差。ここで較正係数の自然対数の±1%、地表面アルベドの±0.025、可降水量の±1.0 cmの範囲の誤差を仮定した。
Publication
Khatri, P., H. Iwabuchi, T. Hayasaka, H. Irie, T. Takamura, A. Yamazakai, A. Damiani, H. Letu, and Q. Kai (2019), Retrieval of cloud properties from sky radiometer observed spectral zenith radiances, Atmos. Meas. Tech., 12,6037-6047,doi:10.5194/amt-12-6037-2019.