冬季北大西洋では、ハドレー循環の下降流域が北緯35度付近にあることが知られていますが、1970年代後半頃からその下降域が極方向に移動していることがわかりました。その移動に対応して、地域的に気候が変動していることが考えられます。本研究では、冬の北太平洋西部を対象に、局所的なハドレー循環の沈降域の端(LHCSE)が極方向に移動することで生じる雲の応答とその放射に伴う加熱・冷却効果や気象場について調査しました (Wang and Iwabuchi, 2019)。
LHCSEの経年変動は、北緯35度付近における相対的な上昇流の強化、大規模スケールで静的安定度の低下や、中層雲の増加によって特徴付けられていました。またRadiative Kernel 法 (Zelinka et al., 2012a; Zhou et al., 2013) と呼ばれる手法を適用することで、LHCSEの移動に最も敏感な雲は雄大積雲 (雲頂気圧: 440–680 hPa、雲光学的厚さ: 23–60) であることが分かりました (図1b) 。この種類の雲が増加することで、大気上端における正味の外向き放射が負偏差となり、同時に東アジア沿岸で降水が増加している領域を制限していると考えられます。
図1. (a) LHCSEの極方向シフトに伴う大気上端における放射フラックス偏差 (W/m2) の地域分布. 正 (負) の値は正味の内向き (外向き) フラックスを示す. (b) 放射フラックスの偏差を雲頂気圧 (CTP) –雲光学的厚さ (COT) の座標系に分離したもの.
Publication
Wang, X., & Iwabuchi, H. (2019). Wintertime modulation of the local cloud and diagnostic fields by the hadley cell subsiding boundary over the Western North Pacific. Geophysical Research Letters, 46. https://doi.org/10.1029/2019GL083470
Reference:
Zelinka, M. D., Klein, S. A., and Hartmann, D. L. (2012a), Computing and partitioning cloud feedbacks using cloud property histograms. Part I: Cloud radiative kernels. J. Clim., 25(11), 3715-3735.
Zhou, C., Zelinka, M. D., Dessler, A. E., and Yang, P. (2013), An analysis of the short-term cloud feedback using MODIS data. J. Clim., 26(13), 4803-4815.