モンテカルロ3次元放射伝達モデルにおける複数波長同時計算手法の開発

乱数を用いて放射量を計算するモンテカルロ法を用いた放射伝達モデルはこれまで数多く開発されてきましたが、そのほとんどが一度の計算で単波長についての計算のみを行えるものでした。本研究では、これまで多くのモンテカルロ放射伝達モデルで用いられてきた最大消散係数法という手法を応用することで、散乱特性が変化しない狭帯域の波長において、一度の計算で効率的に複数波長における放射量を計算する手法を開発しました。

この手法を用いた計算は、図1に示したように、理論値からの誤差はとても小さく、実用に十分な精度を持っています。また、この手法では一度に計算する波長の数を増やすことで、1波長あたりにかかる計算時間が小さくなるため、一度に1000波長を計算する場合は、単波長のみを計算する場合と比較して約70倍の効率で計算をすることが可能となっています。

図1: 波長ごとに異なる吸収の強さを持つ大気に対して、同時に100波長分の放射輝度を計算した場合の理論値からの誤差。

 

発表論文

Iwabuchi, H. and R. Okamura: Multispectral Monte Carlo radiative transfer simulation by the maximal cross-section method. Journal of Quantitative Spectroscopy and Radiative Transfer, 2017, in press. https://doi.org/10.1016/j.jqsrt.2017.01.025