写真観測・理論計算から明らかになった薄明の空の謎

修士1年の齊藤雅典が薄明の空に対する対流圏エアロゾルの影響を写真観測および理論計算により求め,日本気象学会の電子ジャーナル Scientific Online Letters on the Atmosphere  (SOLA) に発表しました.

薄明とは日の出前や日の入り後に空がうっすら明るい時間帯のことで,薄明の空は日々異なる美しい色合いを見せます(図1).何故,あのように美しい空になるのでしょうか?それは,大気分子(窒素,酸素,水蒸気など)によって太陽光が散乱されるためで,その結果,水平線から天頂に向かって赤から青へと美しいグラデーションを生み出します.しかし,大気中には他にもエアロゾルと呼ばれる大気微粒子が存在し,それによる散乱も相まって物理過程は複雑になっています.今回,私たちは,特定の条件下では水平線付近で薄明の空が青くなる現象を写真観測によって捉えました.これは大気下層に存在する対流圏エアロゾルが大きく影響しているのではないかと仮説を立てて,理論計算によってその現象を再現しました.また,その現象のメカニズムを理論計算から明らかにし,以下の論文として発表しました.普段の生活の中ではあまり気に留めない現象でも,しっかり観察し,深く考えることで新しい発見につながることがあります.他にも面白い現象が,身近な所に転がっているかもしれません.

twilight

図1.薄明の空の写真.

 

発表論文

Saito, M., H. Iwabuchi, and T. Hayasaka (2013), Physical explanation of tropospheric aerosol effects on twilight sky color based on photographic observation and radiative transfer simulations, SOLA, 9, 015–018, doi:10.2151/sola.2013-004