晴天時の薄明の空の色合いは大気の状態によって日々変化します。放射伝達モデルを用いたシミュレーションは対流圏エアロゾルの多寡で水平線付近の薄明の空の色が大きく変化することを明らかにしました。これにより、薄明の写真観測によるエアロゾルの観測可能性が示されました。
写真データを入力とし、最適推定法(Rodgers, 2000)を用いて対流圏と成層圏のエアロゾルの光学的厚さとその不確実性を推定する手法を開発しました。リトリーバルテストや他の観測測器との比較結果から対流圏エアロゾル、及び火山噴火時の成層圏エアロゾルの光学的厚さを本手法を用いることで精度よく推定できることが示されました。本研究で提案した手法は、従来エアロゾル観測が困難だった薄明時に適用可能であり、測器に用いるデジタルカメラも安価で携帯性があるため、衛星観測が困難な極域や砂漠域において相補的に用いることで、高密度エアロゾル観測に貢献できると考えられます。
図1.デジタルカメラで撮影された薄明の空の写真。対流圏エアロゾルの光学的厚さが大きいほど水平線付近が青暗くなっている。
図2.本研究手法で推定したエアロゾルの光学的厚さと他観測測器との比較
発表論文
Saito, M. and H. Iwabuchi: A new method of measuring aerosol optical properties from digital twilight photographs. Atmos. Meas. Tech., 8, 4295–4311, 2015, (www.atmos-meas-tech.net/8/4295/2015/) doi:10.5194/amt-8-4295-2015. (20151000)