飛行機から見える灰色の雲 [放射伝達モデルを用いた現象の理解]

飛行機から雲を観察すると、時折、水平線付近に、図のように白い雲の上に灰色の雲が見えることがあります。雲粒は可視光の吸収が弱く、通常、雲が厚いほど光をよく反射して輝度が高くなります。このため、このように白い雲の上に灰色の雲が見えることは単純には理解できない現象であります。灰色の雲の雲粒の中に光を吸収する物質が大量に含まれている可能性も考えられますが、これまでそのような報告はありませんでした。本研究では、この雲が比較的薄く、下の雲と比べると水平方向の広がりが小さいという特徴に着目し、また上下の雲が鉛直方向には重ならないものと仮定して3次元的な放射伝達計算を行い、観測された灰色の雲を再現することに成功しました。

本研究の結果から、このような灰色の雲が見えるのは、厚い雲の上に水平方向の広がりが小さい薄い雲が、鉛直方向には重ならず、

観測者から斜めの方向に見た場合に重なって見えるときであるということが明らかとなりました。

図1.観測された灰色の雲。水平線付近に、白い雲の上に重なるように見える。

発表論文

Okamura, R., and H. Iwabuchi: Physical interpretation of gray cloud observed from airplanes. Applied Optics, Vol. 55, No. 21, 5761-5765, July 20 2016. https://doi.org/10.1364/AO.55.005761