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地球表層におけるCO2収支の概念図

産業革命以降、化石燃料や森林破壊によって大気中二酸化炭素(CO2)濃度が急速に増加しています。CO2濃度の増加は温室効果を強めるため、将来の気候を大きく変化させると懸念されています。この「地球温暖化」と呼ばれる気候変動に対応するためには、CO2がどこからどれだけ大気に放出され、どこにどれだけ吸収されているか、という地球表層のCO2収支を解明し、CO2濃度の増加を定量的に理解することが不可欠です。大気に放出されたCO2は全てが大気に残留するわけではなく、一部は海洋と陸上生物圏によって吸収されていますが、両者へのCO2吸収量は十分に理解されているわけではなく、「地球温暖化」に対応する上で大きな困難となっています。

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大気採集に使用する手動ポンプと大気充填用容器

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酸素濃度分析の様子

これら海洋と陸上生物圏へのCO2吸収量を見積もる方法として、大気中の酸素(O2)濃度を利用する方法が注目されています。O2は温室効果気体ではありませんが、その変動はCO2濃度の変動と密接に関係しており、両者を同時に観測し、解析することで海洋と陸上生物圏のCO2吸収量を分離して見積もることができます。(O2の項目を参照)

私たちは、1999年から10年以上に渡り航空機を利用して日本上空のO2およびCO2濃度の変動を観測してきました。下の図は、1999–2011年に観測した日本上空のO2濃度(左)とCO2濃度(右)の変動です。CO2濃度はどの高度帯でも冬から春にかけて高く、夏に低くなるという周期的な季節変化を示し、O2はそれとは逆位相で変化しているのが分かります。これは、陸上・海洋生物の光合成や呼吸の影響を強く反映している結果と言えます。また、主に化石燃料の消費によってCO2濃度が経年的に増加し、その逆にO2濃度は経年的に減少している様子がどの高度でも現れています。この観測から明らかになったCO2とO2の経年的な増加/減少傾向を解析することで、大気に放出されたCO2のうち、海洋が28%、陸上生物圏が22%を吸収していることが明らかになりました。

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日本上空の対流圏各高度におけるO2(左)およびCO2(右)の濃度変動

参考文献

  • S. Ishidoya, S. Aoki, D. Goto, T. Nakazawa, S. Taguchi and P. K. Patra, Time and space variations of the O2/N2 ratio in the troposphere over Japan and estimation of global CO2 budget, Tellus, B64, 18964, http://dx.doi.org/10.3402/tellusb.v64i0.18964, 2012.