観測項目

二酸化炭素(CO2) | メタン(CH4) | 一酸化二窒素(N2O) | 一酸化炭素(CO)
六フッ化硫黄(SF6) | 酸素(O2) | CO2の炭素同位体 | CH4の炭素・水素同位体


六フッ化硫黄 SF6

六フッ化硫黄(SF6)も温室効果をもつ気体のひとつです。六フッ化硫黄はもともと大気中にほとんど存在していませんでしたが、1960年代から工業的に生産されるようになり、それが大気に排出されることによって急激に大気中の濃度が増え続けています。主に、電力供給に関係した装置などで絶縁ガスとして利用されてきました。六フッ化硫黄を製造する際や、それを利用している装置が修理されたり廃棄されたりする際に、六フッ化硫黄が大気中に漏れ出ていると考えられています。現在の大気中の濃度はおよそ6ppt(pptは1兆分の1を表します)と極めて微量ですが、最近のわずか10年間の間におよそ2倍に増えたとされています。今後もこのような増加が続いた場合、地球温暖化に対する寄与が無視できないほど大きくなる可能性があります。そのため、地球温暖化防止のための国際的な取り組みを定めた京都議定書においても、今後削減すべき温室効果気体の一つとして指定されています。

私たちは大気中の六フッ化硫黄濃度を地球上の様々な場所で観測しています。図は航空機を使って日本上空の大気を観測した結果を示しています。この図から、どの高度においても六フッ化硫黄濃度が年々増加していることが分かります。また、2001年を基準にすると、その後の4年間に約20%も濃度が増加したことになります。

六フッ化硫黄の最大の特徴は、大気中で安定であるということです。対流圏や成層圏の中では、化学反応によって消滅することはほとんどありませんし、海水に溶ける量もわずかです。このように安定であるということは、人間が大気に放出した六フッ化硫黄が、どこにも除去されずに、大気の流れに運ばれて広がってゆくということを意味しています。この性質を逆に使うと、大気中の様々な場所で六フッ化硫黄濃度を調べることによって、まだよく分かっていない大気の流れの様子を解明できることになります。この原理を利用して、例えば成層圏のある高さの空気が地表付近の空気と比べてどれだけ古いのか、ということを調べる研究も行っています。

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航空機を用いて観測された日本上空における六フッ化硫黄濃度の変動
黒点は観測値(各高度帯での平均濃度)を、点線は観測された濃度変動に対して当てはめた直線を示す