観測項目

二酸化炭素(CO2) | メタン(CH4) | 一酸化二窒素(N2O) | 一酸化炭素(CO)
六フッ化硫黄(SF6) | 酸素(O2) | CO2の炭素同位体 | CH4の炭素・水素同位体


メタン CH4

メタン(CH4)は、二酸化炭素(CO2に次いで重要な温室効果気体です。産業化以前のCH4濃度は約700ppbv(氷床コア分析のページをご覧ください)でしたが、現在では全球平均で約1800ppb近くにまで達しています。CH4の放出源は、湿地、水田、反芻動物、埋立地、石炭・石油・天然ガスの採掘・輸送時の漏出、森林破壊や焼き畑など様々です。現在では、放出源のうち60%程度が人為起源であると考えられています。すなわち、人為起源CH4の放出の増加が、産業化以後のCH4濃度の増加に寄与してきたと考えられるのです。一方、CH4は、対流圏・成層圏内での化学反応と土壌表面での酸化により大気中から除去されます。このうち、対流圏内でのOHラジカルとの反応がCH4消滅源の80%以上を占めると考えられています。

私たちは、いくつもの観測から、大気中のCH4濃度の全球的な時空間変動を明らかにしてきました。下の図は、西太平洋を航行する外洋船舶で採集された大気試料の分析から得られたCH4濃度の時間変動です。

西太平洋域における大気中メタン濃度の変動 赤から青の色の違いは、南緯40度から南緯40度から北緯35度までの観測地点に対応している

西太平洋域における大気中メタン濃度の変動
赤から青の色の違いは、南緯40度から南緯40度から北緯35度までの観測地点に対応している

上のグラフをよく見ると、CH4濃度は1980年代までは大きな濃度増加率を示していましたが、1990年代に入って増加率は鈍り始め、2000年代にはほぼ横ばいだったことがわかります。ところが、2007年には再び大きな濃度増加が観測されました。また、観測地点ごとに特有の季節変動を持つこともわかります。これらの変動はCH4の放出源と消滅源の変動に起因すると考えられますが、その詳しい要因はまだ定量的に明らかになっているわけではありません。私たちは、CH4の同位体比の分析と合わせて、CH4濃度の変動要因とCH4の全球収支のより深い理解に向けた研究を進めています。