観測項目

二酸化炭素(CO2) | メタン(CH4) | 一酸化二窒素(N2O) | 一酸化炭素(CO)
六フッ化硫黄(SF6) | 酸素(O2) | CO2の炭素同位体 | CH4の炭素・水素同位体


一酸化炭素 CO

一酸化炭素(CO)は私たちが主に研究対象としているCO2CH4と違い、温室効果に対する寄与がとても小さく、温室効果気体であるとは考えられていません。しかし大気中のCH4やオゾンの生成・消滅と密接に関わっており、大気化学において重要な役割を担っている気体であるといえます。

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一酸化炭素の放出源・消滅源に関する模式図

 

COは、主に大気中のOHラジカルとの酸化反応で消滅します。OHラジカルは大気の酸化剤・掃除屋と称されており、多くの気体と反応しこれを取り除きます。OHラジカルのおよそ4分の3がCOとの反応で消費されるため、COの濃度がOHラジカルの濃度を左右する大きな要因であると考えられています。特にCH4の消滅はその大部分がOHラジカルとの反応によるものであり、大気中のCOの増加がOHラジカルの減少を招き、CH4の消滅が抑えられることで結果としてCH4濃度を増加させると考えられています。また、COの消滅反応は強い温室効果気体である対流圏O3を生成する引き金となることが知られています。

このようにして、COは間接的に温室効果、地球温暖化に関わっているといえます。大気中に放出されるCOについて、その主な起源は大きく分けて三つあります。

一つは人間活動によって放出されるものです。これはさらに化石燃料の消費と、木材に代表されるバイオマス燃料の消費に大きく分類されます。化石燃料の消費は日本や欧米で多く、特に自動車の排気ガスに大量に含まれています。バイオマス燃料は中国南部やヨーロッパで多く使われています。
次の一つは森林火災によるものです。森林火災は気温や湿度等と関連して、規模や発生地域が年ごとに大きく変化します。この他あまり量は多くありませんが、土壌や海洋からの放出もあります。
最後の一つは大気中でCH4が消滅した際に生成されるものです。その他にイソプレンやテルペンに代表される炭化水素類が大気中で酸化された時も、最終的にCOになります。もちろんこれらCH4や非メタン炭化水素の起源についても、人為起源と自然起源に分けられます。

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船舶観測によって得られた西太平洋域における一酸化炭素濃度の緯度分布
月ごとの平均値を示す

私たちはCOの観測を1990年より開始しました。その一部として、船舶観測による結果を上図に示します。図より、COは南北方向に非常に偏った分布をしていることがわかります。1年を通して北半球側の濃度が高く、これは放出源となる化石・バイオマス燃料の消費が北半球に集中していることによります。

この南北方向の濃度勾配は季節によって大きく変動します。夏の時期はOHによる消滅が盛んに行なわれ、濃度が低下します。また、乾季の到来によって森林火災が頻発する地域もあります。図では8月頃に北半球側(西太平洋)の濃度が最も低下し、逆に南半球の濃度は高いため、南北間の濃度勾配が最も小さくなっていることがわかります。逆に3月頃は南アジア域の森林火災や中国のバイオマス燃料消費の影響が強く現れ、濃度勾配が最も大きくなっています。