観測項目
二酸化炭素(CO2) | メタン(CH4) | 一酸化二窒素(N2O) | 一酸化炭素(CO)
六フッ化硫黄(SF6) | 酸素(O2) | CO2の炭素同位体 | CH4の炭素・水素同位体
二酸化炭素 CO2
地球表層における炭素の貯蔵庫は大気と海洋と陸上生物圏であり、大気と海洋および大気と陸上生物圏は絶えず炭素を交換しています。これらの交換は、氷期—間氷期のような劇的な気候変動の場合を除くと、自然の状態では通常大きな変化をしませんので、したがって大気中の二酸化炭素は一定に保たれます。ところが19世紀末の産業革命を契機として人間活動が活発化し、それに伴って大気中の二酸化炭素濃度が急速に増加しました。
産業革命以降の濃度増加の様子は、上図からよく理解できます。この図は、南極H15地点(昭和基地から70km程内陸に入ったところ)で掘削した氷床コアを分析した結果と、南極点での大気の直接観測から得られた年平均濃度を合わせて作成したものです。大気中の二酸化炭素濃度は、現在の間氷期のほとんどの期間にわたってほぼ280ppmで安定していましたが、産業革命以降徐々に増え、その傾向は特に1960年以降に強まり、近年では毎年1.9ppmの割合で増え続けています。最近の大気中濃度の変動の詳細は、右図に示した日本上空における航空機観測の結果から見ることができます。二酸化炭素濃度は、季節変化と数年程度の不規則変動を伴って経年的に増加していることが分かります。季節変化は主に陸上生物の光合成と呼吸によって生じており、年々変動は、エルニーニョ現象や火山噴火などによって気候が変化し、それに伴って大気と海洋あるいは陸上生物圏との間での二酸化炭素交換が影響を受けるために生じていると考えられます。
大気中の二酸化炭素の増加は、われわれ人類がエネルギーや食糧の生産・消費のために石炭や石油、天然ガスといった化石燃料を大量に消費し、また資源の確保や食糧生産などのために森林を破壊したことによって生じています。しかし、人間活動によって大気に加えられた二酸化炭素が、どのように海洋と陸上生物圏に配分されているのかがよく分かっておらず、地球温暖化に対応する上で大きな困難となっています。
この問題を解決するためには、大気中の二酸化炭素濃度の観測をさらに拡大し、時間・空間変動の実態を詳細に把握するとともに、高度な数値循環モデルを開発し、それを用いて濃度変動を解析する必要があります。また、二酸化炭素の同位体比や大気中酸素濃度の測定と解析も有効な手法として注目されています。