観測項目

二酸化炭素(CO2) | メタン(CH4) | 一酸化二窒素(N2O) | 一酸化炭素(CO)
六フッ化硫黄(SF6) | 酸素(O2) | CO2の炭素同位体 | CH4の炭素・水素同位体


一酸化二窒素 N2O

一酸化二窒素(N2O)は、二酸化炭素(CO2メタン(CH4に次いで、今後の地球温暖化にとって第3番目に重要な気体として注目を集めています。現在の大気中のN2O濃度は約318ppbv(ppbv:体積10億分率)であり、CO2濃度のわずか1000分の1以下ですが、N2Oの1分子あたりの赤外線吸収効果はCO2の200倍以上もあるため、温室効果への寄与は全温室効果気体のうちの5%を占めることになります。

またN2Oは、大気化学的にも非常に重要な気体です。N2Oは対流圏では消滅源をもたず、成層圏に達した後に光化学反応(光分解反応および光酸化反応)によって分解されますが、その反応の過程で生成されるNOがオゾン(O3)を分解するため、オゾン層の破壊につながることになります。

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日本上空における航空機観測から得られた二酸化窒素年平均値の高度分布

以上のような重要性から、私たちや他の研究機関により、N2O濃度の系統的な観測が開始されました。図に、東北大学による観測結果の例を示します。上図は、航空機を用いて観測された、日本上空におけるN2O濃度の高度分布を示しています。また下図は、船舶を用いて観測された、太平洋上におけるN2O濃度の緯度分布を示しています。

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船舶観測によって得られた、西太平洋域における一酸化二窒素濃度の緯度分布

これらの図から、近年のN2O濃度は全ての高度帯と緯度帯において、経年的に明らかな増加を続けていることが分かります。また、東北大学における氷床コア分析の結果からも、産業革命以前には276ppbv前後であったN2O濃度が、19世紀半ばから現在に至るまで増加を続けていることが分かっています。

このようなN2O濃度の増加は人間活動の拡大に起因するものと考えられていますが、N2Oの放出源は極めて複雑かつ多様であるため(注1)、いまだに増加の原因に関する定量的な理解が得られていません。私たちはこの問題の解決に向けて、N2Oの濃度のみならず、その放出源に関する情報をもたらす窒素(N2)および酸素(O2)の同位体比の観測も併せて行うことにより、地球表層におけるN2Oの循環をより深く理解するための研究を推進しています。

注1) 現在知られているN2Oの主な放出源
・自然起源:海洋からの放出、土壌中の微生物活動(硝化・脱窒反応)
・人為起源:化石燃料燃焼、バイオマス燃焼、窒素肥料、農耕牧畜、土地利用変化、汚水など