観測項目

二酸化炭素(CO2) | メタン(CH4) | 一酸化二窒素(N2O) | 一酸化炭素(CO)
六フッ化硫黄(SF6) | 酸素(O2) | CO2の炭素同位体 | CH4の炭素・水素同位体


酸素 O2

3.1-o2co2

二酸化炭素と酸素濃度の観測結果から推定した、近年の二酸化炭素収支

大気中の酸素(O2)は温室効果気体ではありませんが、その濃度変動は二酸化炭素(CO2)に代表される他の温室効果気体の変動と密接に関連しています。それゆえ、大気中O2濃度変動を高精度で測定することは、全球炭素循環を解明する上でも重要な役割を担っています。大気中O2濃度を変動させる主な要因としては、化石燃料燃焼や陸上・海洋生物における光合成・呼吸に伴うもの、あるいは、大気海洋間における気体交換によるものなどがあげられます。最近の観測結果では、大気中CO2濃度は年々増加傾向にあるのに対し、大気中O2濃度はそれとは逆に減少傾向にあります。このことから考えられる主要な要因としては、化石燃料燃焼によるCO2増加とそれに伴うO2減少があげられます。また、その他の要因として考えられるのは、陸上生物の光合成におけるCO2吸収とO2放出の影響、さらには、大気中CO2が大気から海洋に吸収されている効果などがあげられ、これらの過程が複雑に相関しています。

3.1-O2graph

仙台市郊外で観測された大気中酸素濃度(d(O2/N2)と二酸化炭素濃度の観測値
観測値へのベストフィットカーブ、長期変動成分をそれぞれ実線と破線で示す

 

また、大気中O2濃度は年スケールで見ると顕著な季節変動を現すことが知られています。周知のとおり、CO2は夏に低濃度、冬に高濃度を現すのに対し、O2は夏に高濃度、冬に低濃度を現すことが観測されており、これは陸上・海洋生物の光合成や呼吸の影響を強く反映している結果であると捉えることができます。しかし、海洋においてはO2とCO2の化学的性質が大きく異なります。O2に関しては、海水中ではO2は中性を保つため、ヘンリーの法則で溶けうる量しか海水中に溶け込まないのに対し、CO2は海水に溶けると弱酸として解離するため、弱アルカリ性の海水には溶け込むことになります。それゆえ、海洋におけるCO2吸収は海水中のCO2と弱酸との間の反応を通して起こるため、O2変動には関与していないことになります。これはCO2の緩衝作用として広く知られています。

これらのことから、大気中O2濃度を測定することで、大気中CO2の観測だけでは得られなかったような海洋生物の生産量や、生物におけるCO2吸収量まで見積もることができるというわけです。